2014年09月11日

『春を背負って』

九月に入りぐっと涼しさが増しました。皆さま どうか体調を崩さぬ様、ご自愛下さい。
個人的な話ですが、毎年八月のお盆の時期に、ご先祖様の墓参りもそっちのけで泊まりがけで山登りをするのが恒例となっておりまして、今年は剱岳(早月尾根ルート)に登ってきました。噂に違わぬ急登で「苦しい苦しい」とずっと言いながら登ってました。
さて、剱岳といえば、映画『劔岳 点の記』が有名ですね。私も登った後、この映画を観たのですが、なんと壮大で美しい映像! ため息が出ました。と同時に「登る前に観なくて良かった…」とつくづく思いました。
その『劔岳 点の記』の木村大作監督の最新作『春を背負って』の紹介です。

首都・東京でバリバリの金融マンとして忙しい毎日を送っている長嶺亨(松山ケンイチ)は、母(檀ふみ)から父・勇夫(小林薫)の突然の訃報連絡を受ける。父は立山連峰・大汝山で山小屋「菫(すみれ)小屋」を営んでいたのだが、遭難した登山者を助けようとして命を落としたのだ。父の葬儀の為 帰郷した亨は、父・勇夫が山小屋の主人としていかに周りの人々に慕われ頼りにされていたかを知り、また勇夫の菫小屋に託した思いに触れ、菫小屋を継ぐ決心をする…

『劔岳』では、男達の山に掛ける思い・自然の厳しさをひたすら描く、といった趣ですが、今回の『春を背負って』は、山の自然の美しさを舞台に「家族」を描いています。登場人物達の語る言葉の一つ一つは飾り気のない簡素なものですが、それでも嘘くさかったり陳腐に聞こえたりはしません。台詞に説得力を持たせているのは、何と言っても映像の美しさ。とにかく立山の景色の素晴らしさ、これに尽きます。今回もCG/特殊効果は一切無し、俳優達が実際に山に登って現地で撮っています(一部、山小屋内部のシーンはスタジオセットで撮っているようです)。
原作小説の舞台は奥秩父ですが、映像化するにあたり、山を知り尽くした木村監督の頭にまず浮かんだのが、今回のロケ地・大汝山とのこと。「どこをとっても画になる」のが理由だそうですが、それは映画を観れば大いに納得。
当館での上映は残すところ明日9/12(金)一日となりました。ぜひご覧下さい。




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2014年07月30日

『チョコレートドーナツ』について

新潟地方も梅雨明けが発表され、暑さも夏本番、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
炎天下での農作業も、外回りの営業も、ひとまずは置いておいて、冷房の利いた映画館で良作の映画などいかがですか。
今回は、当館で現在上映中の映画をご紹介致したく、しばしのお付き合いをお願い申し上げます。

「チョコレートドーナツ」
映画の舞台は1979年カリフォルニア、シンガーを夢見ながらもショーダンサーで日銭を稼ぐルディ。ゲイであることを隠して生きる弁護士のポール。母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年・マルコ。世界の片隅で3人は出会った。” (映画公式ホームページ リード文より)

ルディとポールは、母親が逮捕され一人ぼっちになってしまったマルコを引き取り、家族として生きていく決意をするが、ゲイのカップルである二人に差別と偏見が立ちはだかり、やがてマルコは二人から引き離されてしまう…。

個人的には、アメリカという国には同性愛者に対する理解がわりと昔からあったような印象が漠然とありましたが、’79年当時はこれほどまでに社会制度的にも雰囲気的にも同性愛者に厳しい世の中だったのか…と感じられました。前年にはゲイであることを公にしていたサンフランシスコ市会議員が市庁内で射殺される、という酷い事件もあったほどだそうで、差別・偏見が厳然としてあったようです。
そうした社会情勢の中でも負けずになんとかマルコの里親となるべく闘う二人の姿が観る者の心を打ちます。まずは、この二人の演技が見どころの一つ。
ルディは、ごく早いうちにゲイであることをカミングアウトし生きてきた、という設定で、それがゆえにさらされてきたであろう偏見・差別との折り合いの付け方もある程度、心得ている。自嘲的なところが少しあって、自分が馬鹿にされるのは平気だけど、マルコ(=自分より更に弱い存在)のこととなるとどうしても感情的になってしまう…、という感じのルディを、アラン・カミングが熱演(「熱演」という表現がまさにぴったり)しています。
対するポール役のギャレット・ディラハント、抑えられた演技が素晴らしい。法曹界というお堅い業界で自分を隠して生き続けてきたため感情的になることはないが、ときおりちらっと見せる本音の表情が真に迫っている感じです。

社会から見捨てられたものたちが、どうやって生きていくか。印象的な言葉が登場人物たちからいくつか語られます。
とくに心に残るのは、二人の代理人を務めた弁護士の言葉。
ついに万策尽きたポールがふと「正義などないんだな」と呟く。
それに対し弁護士が言います。
「お前も法律家なら、学校でまず最初にそう習っただろ」
これだけだと非常にシニカルな救いのない言葉ですが、彼は続けます。
「…それでも闘うんだ」

映画の原題は『any day now』。ボブ・ディランさんの曲:I shall be released のコーラス直前に印象的に繰り返されるフレーズです。映画の中でもクライマックスでルディによってドラマチックに歌いあげられる名曲ですが、この曲、不思議なことにディラン御大によるオリジナル録音バージョンが発表されたのは、’91年のブートレッグ・シリーズにて(録音自体は、’75年)。ただし、コンサートでは定番の曲だったようで、「before the flood」「at budokan」などのライブ盤で名演を聴くことが出来ます。お勧めは「rolling thunder revue」でのジョーン・バエズさんとのデュエットで、’75年当時の乗りに乗ったディラン先生の歌声が聴けます。
その他にも映画の中で70年代の名曲がたくさん使用されています。どの曲も、流れてくる場面の主人公たちの心境と曲の歌詞が合っているのが、大変 好感が持てるところ。エンドロールで流れるルーファス・ウェインライト氏の書き下ろし曲『metaphorical blanket』もばっちり収録したこの映画のサウンドトラックCDは当館にて販売中です。

映画は、8/8(金)まで上映。お見逃しなく。
                                           スタッフS


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posted by シネパラ at 19:23 | Comment(1) | TrackBack(0) | スタッフS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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